ひとりぼっちのさくらんぼ
「なんで高級チョコレート?」
と尋ねると、
「それは秘密」
と、お姉さんは静かに答えた。
「それで?何だっけ、J Kちゃん」
お姉さんは箱を開けて、高級チョコレートを一粒口の中に頬張って、あたしの隣に座る。
「死んだかもって話だっけ?」
「そうです、何だか現実味が無くて」
お姉さんはチョコレートの箱を私のそばまで寄せて、
「食べなよ」
と、勧めてくれる。
あたしはそっと箱の中のチョコレートを掴もうとしたけれど、やっぱり指が透き通っていて実体が無いみたいに、チョコレートを掴めない。
「あなた、物に触れられないの?」
お姉さんの問いかけに、あたしはゆっくりうなずいた。
「わかんないけど、ここで目覚めた時から変な感じで……。感覚が無いの。全身が透明になった感じ」
「でも、あれ?私はさっきあなたに触れられたよね?」
お姉さんはチョコレートの箱をローテーブルに置いて、体が私に向くように座り直した。