ひとりぼっちのさくらんぼ
死んでいない。
(生きている!)
「大丈夫だよ」
お姉さんはもう片方の手で、あたしの背中をさすってくれる。
「私が一緒に居るから。あなたのことを、守ってあげるから」
お姉さんはあたしの頬に流れる涙を指先で軽く拭って、
「ひとりぼっちだけど、私達にはお互いがいるよ」
と、言った。
「どういうこと?」
あたしの質問に、お姉さんはこう答えた。
「過去のあなたと、未来の私で、現在
を生きるんだよ。ふたりで、ひとつ。ね、私達ってさくらんぼみたいじゃない?」
「……さくらんぼ?」
「そう、さくらんぼ。ひとりぼっちの、さくらんぼ」
この時のお姉さんの表情に、あたしは密かに恐怖を感じた。
だって。
本当に、寂しくて。
悲しい表情だったから。
あたしはしばらく、お姉さんの家に居させてもらうことになった。
まぁ、他に行くところなんて無いし。