ひとりぼっちのさくらんぼ

窓の外は、もう夜。

お姉さんは夕食を作り始めた。

キッチンに立ち、何かの具材を切っている。

包丁の音がリズムに乗って聞こえてくる。



「ねぇ、J Kちゃん。あなた、どこで寝る?」

「どこでもいいよ、お姉さんの都合の良い所で大丈夫」



あたしはリビングからキッチンに向かって答えた。



「えー、決めてよぉ。ベッドのそばに布団敷く?」

「うーん、それでもいいけど」

「『けど』?」



あたしはソファーを指差した。



「あたし、ここがいい」



お姉さんは包丁を置いて、
「え、ソファーで眠れる!?」
と、驚いている。



あたしはうなずきつつ、
「ここで目覚めたから、ここがいい」
と、ソファーにもたれかかった。



「あなたがいいなら、まぁ、いいけど……」

「お姉さんはベッドで寝てね」

「えー、うん。ごめんね」

「いいよ、全然」



お姉さんは夕食にミートソーススパゲティに、サラダを食べた。

美味しそう……とは思うけれど、不思議とあたしのお腹は空腹を訴えない。

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