ひとりぼっちのさくらんぼ
「ごめんね、私だけ」
「気にしないで。でもさー、あたし将来、美味しそうなごはんを作れるようになるんだね」
「J Kちゃんがこのごはんを食べるのは、十七年後ってことかぁ」
「……遠っ!」
あたしとお姉さんはふたりで声をあげて笑った。
お姉さんがリビングから出て行って、廊下の右側、奥の部屋に入った。
玄関に近い部屋。
そこが寝室らしい。
「じゃあ、おやすみ。J Kちゃん」
「うん。また明日ね、お姉さん」
リビングから出ずに、あたしは腕をうんと伸ばして手を振る。
お姉さんは笑顔で手を振り返してくれた。
夜のリビングに、ひとりきり。
ソファーに寝転んでみる。
(令和元年……かぁ)
十七年後の世界で。
あたしは目を閉じてみる。
あたし、どうしてここにいるんだろう。
目覚める前、何をしてたんだっけ?
確か、……あれ?