ひとりぼっちのさくらんぼ

第二話


朝日が昇った。

窓のカーテンを開けようとして。



(そういえば、あたしは今、物に触れられないんだったっけ)



そう思ったけれど、時すでに遅し。

勢い余って、体勢を崩した。



(やばっ!転ぶ!)



ガラス戸に激突するかも!!なんて、一瞬青冷めたけれど。



「わっ!?」



あたし、体がカーテンもガラス戸も通り抜けて。

ベランダに出て行った。



ふわふわとした感覚。

痛みとかは全く無くて。

足元に床の感触すら感じない。



あたし、ベランダの柵だって通り抜けるってこと?



(そうなったらあたし、どうなっちゃうんだろう?)



背筋に冷たいものが流れる。



ベランダに立っている感覚が無いから。

このままあたし、真っ逆さまに落ちるんじゃ……?




恐ろしくなって、慌てて部屋の中に帰る。

ガラス戸を再び通り抜けるのは怖かったけれど、部屋の中に帰ってきたら、ホッとした。


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