ひとりぼっちのさくらんぼ

「ここって、ショッピングモールが近い所?B市に近い……」

「そうそう。まだあるよ、ショッピングモール。それに、ここらへんに大学が出来たの。私立K大学のA市キャンパス」



そういえば。

私立大学が近々建つらしいって噂、あたしも聞いたことがある。



「もう十年前くらいかな?」

「そうかぁ」



街を歩いていると。

若い人をよく見かけた。

大学の学生さんなのかもしれない。



「この地域は、若者が増えたんだ。マンションとかもあなたが知っている時より多く建っているでしょ?」

「そうかも。……あっ、嘘。ここのCDショップが無くなってる!!」

「あー……、CDショップだったっけ?今は介護施設になってるよ、ここ」



あたしは無意識に、足が家に向いていた。

お父さんとお母さんと暮らしていた、あの家。



「J Kちゃん、私はこれ以上はそっちへは行かない」



お姉さんが歩みを止める。

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