ひとりぼっちのさくらんぼ
「……え」
「実家には行かない。あなたが行きたいなら行けばいいけれど、私はここで待つよ」
あたしはそこで初めて、あぁ、家に帰りたかったんだ、と自覚した。
「お姉さんは帰らなくていいの?」
「帰らない。あの人達に会うのは、今は無理」
あたしは正直、お姉さんを放っておいてでも、両親に会いたかった。
だけど。
「じゃあ、帰らない。お姉さんのそばにいる」
強がった。
「いいよ、帰りなって」
と、お姉さん。
あたしは首を振って、
「家に帰るのは、平成に戻ってからにする」
と、笑顔を作った。
「後悔しない?」
「うん。今さ、親に会ったとしてもさ、やっぱりビックリさせちゃうし」
あたしは来た道を戻った。
納得のいかない様子のお姉さんは、
「あなたが後悔しないようにしてよ?」
と、背中から声をかけてきたけれど、
「後悔なんてしないよー」
なんて、あたしは笑う。
しばらく街を散策していると。
犬の散歩をしているおじいさんに出会った。