ひとりぼっちのさくらんぼ

「これから仕事なの?」



お姉さんがキャラメルラテを飲みつつ、市原さんに尋ねた。



「うん。実は一昨日から出張していて、今朝帰って来たばかりなんだ。家に帰る前にここで朝食を摂ろうと思って。でも、また出社しなくちゃ」

「えー、忙しいんだね」

「まぁ、仕事は好きなんだけど、さすがに疲れる時もあるね」



市原さんはニコニコ笑って話す。



(本当に仕事が好きなんだろうなぁ)



ベーグルを食べ終えて、コーヒーを飲んだ市原さんは、
「上条さん、連絡先を聞いてもいい?」
と言った。



(え。そんなスマートに聞けちゃうんだ!?)



驚いたのはあたしだけじゃないらしく。

お姉さんも、
「え、あ、はい!」
と、明らかに動揺した声を出した。



「ごめんね。ゆっくり話したいんだけど、もう行かなくちゃいけなくて。また、連絡してもいいかな?」



市原さんはスーツのポケットからスマートフォンを取り出した。

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