ひとりぼっちのさくらんぼ
そういうことじゃないんだけど。
「タイムスリップの前に何かあったの?高田くんと」
「え?何かあったっけ?……なんか、でも高田くんの名前を聞くとさー、あたし自身がすっごく恥ずかしく思っちゃうんだよね」
あたしは両手で顔を隠す。
「なんで?本人に読まれたら困る小説を書いていたから?妄想をノートに垂れ流して……」
「うぅ〜、言い方、なんか意地悪じゃない!?」
うずくまるあたしに、お姉さんは声をあげて笑う。
「あはっ、あはははっ!ごめん、ごめん。あなた、ちょっと可愛かったから」
「ひどい……、悪い大人だ!」
お姉さんはあたしの隣に座って。
あたしの頭をポンポンと撫でた。
「J Kちゃん、あなたは大丈夫だよ」
「何が大丈夫なのぉっ」
「高田くんのこと、そんなに思い出さなくなるよ」
「えっ」
お姉さんは平然と言う。
「思い出しても、あなた、何とも思わなくなるよ。今は何かのきっかけで、思い出したら恥ずかしく思っちゃうみたいだけどさ」
「何とも思わない?」