深紅の復讐~イジメの悪夢~
暖かい……
今までの苦痛とは全く違う穏やかな時間が流れていた。
あたしは目を開けた。
あたしの体には夏なのにブレザーがかけられている。
あたしに背を向けるように八神さんが座っていた。
「八神……さん。」
あたしの声に反応して八神さんが振り返る。
「清水。起きた?」
「うん……。……ぐあ!」
体を起こすとやはり腹部や腰に痛みが走る。
あたしはまた仰向けに寝転がった。
「無理すんなよ。」
「ん…ありがと。」
八神さんの少しの心遣いが嬉しい。
「八神さん…」
「何。」
あたしは、八神さんの黒い目をしっかりと見つめて言った。
「復讐、するよ。」
八神さんは少しあたしを見つめた。
そして、笑ったんだ。
「よろしく、愛香。」
八神さんがあたしに手を差し出す。
あたしは、寝たままその手を握った。
「こちらこそ、よろしく。夜風。」
夏の風が吹き、八神さん…夜風の長い髪の毛が煽られる。
あたしが寝ている間に時間が経ってしまったのか、あたしたちを、横から夕陽が照らす。
夏服の、紺色のポロシャツ姿の夜風の体のラインがシルエットのように浮かび上がる。
夕陽に照らされた八神さんの顔は、今までで一番優しくて、頼もしい、
そして少し憂いを含んだ
美しい笑みを浮かべていたんだ——。