深紅の復讐~イジメの悪夢~
崖に行くと、美しい夏の風景が広がっていた。
いつからか、蝉の声がしている。
途中で汗ばんできたので、カーディガンを脱いで、腰に巻き付ける。
スマホを開くと、夜風から、メッセージが来ていた。
『愛香、今回の作戦を簡潔に言う。
今回は愛香の初めての復讐だから、手短にやる。
要するに、チュートリアルみたいなもんだ。
気楽に構えとけ。』
そこで一旦途切れていた。
『今回は、だいたい俺がやる。
俺がやるのは、色仕掛けだ。
大抵の男はそれで釣れるから。
あとは、そっちに合流する。
愛香は、ギリギリまで隠れてて。
俺が合図するから。
あとは、そっちで説明する。』
「色仕掛け」という言葉に反応してしまう。
アイツらの怖さは、あたしが一番知っている。
色仕掛けが失敗したら、何があるか?
あたしが一番理解していた。
『気をつけてね、夜風。』
あたしはそう打って送信した。
『おう。』
ただ一言だけが帰ってきた。
あたしは、来るべきその時に備えて、周りを見渡す。
この観光地は、秋がメインだから、今は人はとてもまばら。
普通にここにいたらバレることは百も承知だ。
あたしの視線は大きな板状の石の記念碑に留まる。
あたしは、石碑の裏側にまわり、腰を下ろす。
あたしは、その時をただ、静かに待っていたんだ…