深紅の復讐~イジメの悪夢~
「なにしてんだ?返事は!?」
え…!?
お母さん、怒ってる…。
なんで、だ?
わたしは、慌てて記憶を辿る。
う…そ…。
なにも思い出せない。
このタイミングで「わたし」になっちゃったの?
「は、はい!」
とりあえず返事をした。
「ったくよぉ…。」
やっぱり、怒っている…。
なんで?
わたしは、周囲を見回した。
左手につけた腕時計を見る。
6時…半!?
そっか、わかった。
「あたし」が遅くなったから怒っているんだ。
「ご、ごめんなさい。夕飯、すぐ作ります!」
わたしは走って部屋に入った。
歩いたりなんてしてはダメだ。
お母さんに蹴飛ばされる。
「服…服…」
わたしは、クローゼットの中をかき回す。
「わたし」が買った安いシンプルなもの。
「あたし」が買った派手なゴテゴテしたもの。
何やってんのよ、あたし。
わたしは、迷わず安っぽいTシャツと、短パンを身につけ、キッチンに急ぐ。
「げっ…、カレールーがないっ…。」
わたしはびっくりした。
そうか…「あたし」の時は買い物なんか行かないから、カレールーもないのか…。
しょうがなく、わたしは予定を変更して、肉じゃがを作る。
もう…、憎んでも憎みきれないよ、「あたし」。