深紅の復讐~イジメの悪夢~
6月のある日。
あたしの運命が狂い始める事件が起こる。
「きょーは、転校生が来ます。みーんな、あたたかくー、迎えるよーに。」
佐藤先生が珍しくスーツで教壇に立っている。
———カラカラカラ…
教室に入ってきたのは、女の子。
真っ黒の長い、整えていない髪の毛。
息を呑むほどのスタイルと、美形な顔。
腕にはミサンガをつけている。
彼女は微笑んで言った。
「こんにちは。初めまして。秀怜学園高等部から来ました、八神夜風です。よろしくお願いします。」
秀怜学園!!
日本一の学力と謳われる天才たちが通う学校って…
周りがガヤガヤし始める。
「静かーに!!八神さーんの席は、窓側の一番後ろーだ。」
八神さんは窓際の席に歩き始める。
八神さんは伏見くんの隣の通路を歩いて行く。
ツンとミントのような香りがする。
八神さんは、伏見くんのところに来ると、スッと左手を伏見くんの髪の毛に触れた。
「ひさしぶり、……亜希。」
伏見くんの顔がこわばる。
八神さんは、純粋に微笑んでいるようだった。
「俺のこと、忘れたとは言わせないからね。———まさか…逃げ切れたとでも思った?」
伏見くんの肩がびくんとはねる。
あたしが聞こえるか聞こえないかくらいの声だった。
八神さんの静かな声が鼓膜を震わす。
時が止まったように、その空間には八神さんと伏見くんしかいなかった。