深紅の復讐~イジメの悪夢~
え…?

あたしの口が勝手に動く。



「な…!なんで『わたし』が…!」

「一緒に死ぬのよ、あんたも。あんただけ楽なんてさせない。」



あたしの口は、忙しく動く。

あたしの左目から涙がこぼれる。

いや、ちがう。

これは、「わたし」の涙。


「わたし」が泣いている。




「さようなら。」




ぶーちゃんが火をつける。

ゴーッと音のするバーナーを床に近づける。



ゴーーーー!!



あっという間に床が炎上する。

熱風があたしを襲う。



「熱っ…!」



左目からは、限りなく涙が落ちる。




「あーあ。あたし、もう出るわ。さよなら、最後まで後悔してね。」




ぶーちゃん—愛香が去っていく。

リビングを出て行く愛香の後ろ姿。

あの、いじめられて泣き叫んでいたぶーちゃんじゃない。

背筋は伸びて、堂々とした足取りで歩いていく。



ああ、そう。

ぶーちゃん、あんたはあたしに復讐するつもりなんだね。

これは、あたしへの制裁ってこと?


あたしの右目からも涙が溢れ出す。


「あたし」って結局何だったんだろう。

嘘で塗り固めて仮面を被った「あたし」。

麗華姫に媚を売って、理想の自分を演じて、人をいじめて。


本当になんだったんだろう、「あたし」の人生って。



涙はとどめなく溢れ続けた。


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