深紅の復讐~イジメの悪夢~
「ご…ごほっごほ…」
炎と煙のせいで咳が出る。
呼吸器官が痛くて苦しい。
「うっ…く…」
こんな時にも涙は止まらなかった。
両親は、まだジタバタもがいている。
両親のくぐもった叫び声が、あたしの鼓膜を揺らす。
「ねぇ、白波。クズな両親と死ぬ気分は、どう?」
八神があたしを覗き込む。
無表情だった。
「最……悪…。」
あたしが言ったのか、わたしが言ったのか、わからない。
でも、口からは言葉が紡がれた。
「わ…わたし、ずーっとずっと、親に殴られてきてっ……。そんな自分が嫌でっ…、別の人格を作って……。」
八神は、しゃがみ込んであたし、またはわたしと視線を合わせる。
「あたしはっ……、理想の自分を演じて…、でも、いじめられて。どこにも『あたし』も『わたし』も居場所がなかった……。」
涙が流れる。
熱のこもった床で涙が弾ける。
「自分にも、人にも嘘をついてきて、本当の自分がバレないようにした……。でも、いつの間にか、二重人格になってっ……、いつの間にか愛香をいじめていてっ…。」
八神は、静かに話を聞いている。
すごく、熱いはずなのに。
静かに、あたしを、わたしを。
見つめる。