深紅の復讐~イジメの悪夢~
今回は、夜風は止めなかった。
下がって、なにかスマホを操作している。
遥さんに写真を送っているのだろう。
下を覗くあたしの髪を、初夏の風が吹き抜ける。
ここは、15階。
アスファルトの上に落ちたら、まず助からないだろう。
それに、ここは都心によくある、「穴場」。
人通りも、まったくと言っていいほどない。
あたしが下を見ると……。
はたして、彩綾はそこにいた。
変わり果てた姿だった。
そう、例えるならば……。
トマトを壁にたたきつけた様子。
彩綾は………。
「破裂」していた。
もはや原型をとどめていなかった。
人のような形をして、服を着た、なにかだった。
目をはなしたかった。
だけど、離せなかった。
これが、あたしをいじめた奴の、末路。
かろうじて原型を止めている顔も、酷い有様だった。
こうやって見ている間にも、血溜まりは広がってゆく。
あらぬ方向に曲がっている、首、手足、さらには胴体。
腹は破裂して、内臓らしきものが飛び出している。
吐き気が込み上げてくるのを感じた。
でも、吐けない。
嗚咽ばかりが喉で引っかかる。