深紅の復讐~イジメの悪夢~

今回は、夜風は止めなかった。

下がって、なにかスマホを操作している。

遥さんに写真を送っているのだろう。


下を覗くあたしの髪を、初夏の風が吹き抜ける。


ここは、15階。

アスファルトの上に落ちたら、まず助からないだろう。

それに、ここは都心によくある、「穴場」。

人通りも、まったくと言っていいほどない。


あたしが下を見ると……。

はたして、彩綾はそこにいた。


変わり果てた姿だった。





そう、例えるならば……。

トマトを壁にたたきつけた様子。

彩綾は………。





「破裂」していた。







もはや原型をとどめていなかった。

人のような形をして、服を着た、なにかだった。

目をはなしたかった。

だけど、離せなかった。

これが、あたしをいじめた奴の、末路。



かろうじて原型を止めている顔も、酷い有様だった。

こうやって見ている間にも、血溜まりは広がってゆく。

あらぬ方向に曲がっている、首、手足、さらには胴体。

腹は破裂して、内臓らしきものが飛び出している。


吐き気が込み上げてくるのを感じた。


でも、吐けない。

嗚咽ばかりが喉で引っかかる。

< 300 / 332 >

この作品をシェア

pagetop