深紅の復讐~イジメの悪夢~
第三章 破壊
狂気
「………い、清水〜!…おい、」
佐藤先生の声で目を覚ます。
「あれ…?あたし…。」
「おーい、寝ぼけないでくーださいー。朝かーら居眠りとーは、いいーどきょーですーね。」
顔を上げると、ズキンと背中に痛みが走る。
あ、あたし、あのあと気絶して…
今は8時25分。
朝のホームルームの始まる時間。
ということは、あたし、あのあと誰かに椅子に座らされて…?
きっと、麗華たちだろう。
あたしをいじめたことを隠そうとして…
視線を後ろに向け、八神さんを見る。
八神さんは、あたしを裏切った。
奈々美、百合香、お母さん、八神さん。
あたしを裏切った。
もう…人間不信になりそう…
その八神さんはぼんやりと窓の外を見ていた。
その瞳は何も見ていなかった。
なんだろう、この感じ。
なんか、
なんか、
すごく、胸が締め付けられる。
悲しそうに、どこか濁りの混ざった瞳で静かに外を見ている。
窓から吹き込んだ梅雨の後半の風が、八神さんの整えていない長い髪を揺らす。
八神さんは、瞬きをせずに窓の外を見つめ続ける。
あたし、なんで八神さんのことが気になるのだろう…?
その意味の分からない気持ちは、あたしの未来を本能的に暗示していたのかもしれない…