深紅の復讐~イジメの悪夢~


「あ…」


背中に冷たい汗が流れる。

あたしが気づいた時には遅かった。

神社の反対側から来た、あの人は、あたしの方をしっかりと見据えていた。

真っ直ぐにあたしの方に歩いてくる。


「あ…あ…」


半袖タイプの灰色のパーカーに、ジーンズ、スニーカーという格好をしたスタイルのいい彼女。

神社に吹く涼しい風に、彼女の整えていないまっすぐな髪が(なび)く。

綺麗に整った白い顔。

形のいい唇。

その唇の両端がわずかに上がる。


「こんにちは。清水。」


あたしを裏切った人。

伏見くんが、怖がっている人。

麗華たちに、いじめられていた人。


「や…や…八神…さん」


涼やかな目があたしの目を捉える。

彼女は、フッと笑い、長い前髪をミサンガをつけた左手でかきあげる。


「ちょっと話さないか?」


彼女は、あたしの返事を待たずに、隣に座る。

あたしは、彼女に気を許していない。

伏見くんがなぜ怖がるのかよく分からないから。

八神さんの素性がよく分からないから。

なぜ、ボーッとして、どこか悲しそうな顔で窓の外を見つめるのか、






   ———分からないから———







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