深紅の復讐~イジメの悪夢~
隣に座った八神さんは喋らない。
あたしまで気まずくなってしまう。
「あ…あの…何か、用?」
沈黙に耐えられずに、あたしは口を開いた。
「………ああ。」
しばらく黙っていた八神さんが口を開く。
そして、左腕を上げる。
あたしの視界に、初夏の青い空と、八神さんの白い腕と、青色と、白色のミサンガが広がる。
「なぁ、この青色、何色だと思う?」
「へ…?」
あたしはびっくりした。
しかし、こちらに向けられた八神さんの黒い目を見ていると、急に心が落ち着いた。
なんだろう…この色。
実は、あたし、色とかを見分けるのは得意なんだ。
人より細かく色を見極めることができる。
あたしは、じっくりとそのミサンガの色を見た。
明るめの青色。
あたしの頭の中の知識が繋がる。
「勿忘草……」
八神さんの顔が少し和らぐ。
「正解。勿忘草。さすが。じゃあ、勿忘草の花言葉は…?」
花言葉…。
八神さんは、なんでさっきからあたしの得意分野ばかり聞いてくるのだろう?
「勿忘草。青色の勿忘草の花言葉は、『真実の愛』。ピンク色は、『真実の友情』。白は……『私を忘れないで』」
八神さんが頷く。
「そう。正解。このミサンガは、青と、白。『真実の愛』『私を忘れないで』、その願いを込めているんだ。」