深紅の復讐~イジメの悪夢~
八神さんは、あの、ボーッとしたような、悲しそうな顔をしていた。
「俺の幼馴染……俺の、大切な人は、今、病院にいる。…昏睡状態だ。今日、明日、いつ起きるか分からない。いつ死ぬかもわからない…」
八神さんが悲しそうに目を伏せる。
「勿忘草は、幼馴染…涼風怜が一番好きな、色なんだ。」
「う…うん…」
「亜希に言われたんだろ?俺に気をつけろとかなんとか。」
う!え…何で知ってんだろ。
「まあ、仕方ないんだけどな…。」
次に八神さんが放った一言は、あたしにとって衝撃でしかなかった。
「アイツ、記憶が飛んでんだ。」
はい…?
なんて?
信じろと言われても無理だ。
伏見くんの記憶が飛んでる?
「アイツ、いじめられていたんだ。不良のグループにな。それで、その辛さを断ち切りたくて、記憶を捨てたらしい。どういうわけか、俺がアイツの大切な人を奪ったことになってるけどな。」
八神さんはクスリと笑った。
そう…だったのか…
あたしも分かる。
辛いことを乗り越えるには、現実逃避をするしかない。
忘れるしかない。
伏見くんも、同じだったんだ。
「だからさ、アイツのことは刺激したくないんだ。分かってくれるか?」
あたしは、その言葉に、素直に頷いていたんだ…
「俺が、亜希をお前に近づけさせないのは、亜希が何も思い出さないようにするため。アイツ、お前をみると、毎回何かを感じているらしいんだ。」