極上パイロットはあふれる激情で新妻を愛し貫く~お前のすべてが愛おしい~
常に勉強していなければ務まらない仕事で、試験の前は皆ふらふららしい。


「それで髪、短くしたわけ?」


俺たちがアメリカに発つ前よりずっと短くなっている井上の髪を見て、月島が指摘する。


「乾かす時間がもったいなくて。濡れたまま寝ると寝ぐせがひどいし、ヘルメットの中は蒸れるんだぜ」

「知ってるよ」


一年とはいえ、俺たちも経験しているのだから。

ライン整備の仕事はどんなに暑くても寒くても、そして雨が降ろうが風が吹こうが、外での作業が伴う。

俺はドック整備という格納庫内での整備を行うチームの一員だったのだが、それでも夏は汗だくで、熱中症にならないように水分補給を必死にしていた覚えがある。

冬は寒くて、スパナを握る手に力が入らなかった。


「そういえば少し前に、矢野さんに髪が長いってケチつけられた女の子がさぁ、スパッと、こう」


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