なんちゃって伯爵令嬢は、女嫌い辺境伯に雇われる
42.未来への希望
それから、式の準備は最短の日程で進められ、半年後、私達は無事に結婚式を挙げる事になった。
「サラ様、とてもお綺麗です!!」
ハンナさんとアガタさんに手伝ってもらって、私はウェディングドレスに身を包んだ。胸元にレースをあしらい、裾がふわりと広がった光沢のある白いドレスは、皆さんが似合うと絶賛してくださった一品で、まるで本当にお姫様になったかのような気分にさせてくれる。髪も綺麗に編み込みながら纏めてもらい、お化粧も済ませると、鏡に映った私はまるで別人みたいだ。
「お二人共、ありがとうございます!」
「これなら旦那様も惚れ直されますね」
「そ、そうでしょうか……」
私は照れながら答える。
いくら私が綺麗になったとは言え、セス様に惚れ直していただくだなんて、恐れ多くて想像もできないけれど……、もし、そうなったら良いな、とは思う。
「さあサラ様、もうすぐ式のお時間ですよ」
「えっ、も、もう?」
鏡に映る自分の姿が全然見慣れなくて、何となく落ち着かず、何処か変ではないかと確認していたら、ハンナさんに笑顔で促されてしまった。着替えやお化粧は確かに大変だったけれども、何時の間にかすっかり時間になってしまっていた事に気付いて、私は狼狽える。
私がセス様と結婚だなんて、半年と言う期間をかけて準備してきたとは言え、何だか夢を見ているみたいで、まだ実感が湧いていない。式場に移動したけれど、まるでふわふわと雲の上でも歩いているかのような心地だ。ヒールが高い事もあってか、足取りが覚束ない。
「サラ、とても綺麗だ」
入場して、セス様の所まで辿り着くと、私の手を取ってくださったセス様が、顔を綻ばせながら囁いてくださった。それまで緊張と不安しか感じていなかったのに、一気に嬉しさで胸がいっぱいになる。
「ありがとうございます。セス様も、とても素敵です」
白を基調にした花婿衣装のセス様は、すらりと高い身長としっかりと鍛えられたお身体がより映えて、とても凛々しくて格好良い。こんなに素敵な方が私の旦那様になるなんて、何だか未だに信じられない。そんな事を口にしたら、セス様に怒られてしまいそうだけれども。
セス様にエスコートされて祭壇の前まで進み、緊張しながらも誓いを交わし合って、私達は夫婦になった。
「旦那様、サラ様、おめでとうございます!!」
キンバリー辺境伯邸の皆さんを始めとして。
「セス! サラ! おめでとう!!」
「お二人共、末永くお幸せに!!」
国境警備軍の皆さん。
「お綺麗ですよ、サラ様!」
駆け付けてくださった王都のイアンさん達が、次々とお祝いの言葉を掛けてくださった。
「ありがとうございます、皆さん!!」
祝福してくださる皆さんにお礼を言いながら、隣に立つセス様をそっと見上げる。私の視線に気付いたセス様が目を合わせて微笑んでくださって、顔に熱が集まったけれども、やっぱり幸せで、つい笑みが零れた。
私がこんなに幸せになれるなんて、一年前は思ってもいなかった。フォスター伯爵家でこき使われて、虐げられて、こんな毎日がずっと続くだけなのだとすっかり人生を諦めていたけれど、セス様に出会えた事で、私の人生は劇的に変わった。好条件でお屋敷で働かせていただいて、お母さんから教わったおまじないが魔法だと分かって、国境警備軍でそれを存分に活かせる環境を整えていただいて。気付けば私がフォスター伯爵となって、今ではキンバリー辺境伯夫人だ。とてもじゃないが、変化が目まぐるしくて全然付いて行けていないのだけれども、それもこれも全部、セス様のお蔭だ。
少しでも恩返しがしたくて、ずっとキンバリー辺境伯領で、セス様のお傍でお仕えできたらと思っていたけれども、まさかそれがセス様の妻という形で実現するだなんて、思ってもいなかった。幸せ過ぎて怖いくらいだ。こんなに恵まれていて良いのだろうかと思ってしまう。
セス様にこんなにも幸せにしていただいたのだから、セス様の妻になった以上、これからは辺境伯夫人として、もっと色々な事でセス様を支えられるようになっていきたい。今はおまじないで多少はお役に立てているとは思うけれども、それに甘んじずに、領地の事も、軍の事も、そして今はセス様に任せっぱなしになってしまっている、フォスター伯爵領の事も、もっと勉強して、セス様の力になれるようになって……。何時かは、自信を持ち、胸を張って、セス様の隣に立てるような……そんな人になりたい。
我ながら身の程知らずで大き過ぎる夢だと思うけれども、それでも一歩ずつ、なりたい自分を目指して生きたい。将来の夢なんて持つ気になどなれなかった私が、今は未来に希望を持てている。そのきっかけをくださったセス様には、感謝してもし足りない。セス様が少しでも幸せになれるのならば、私にできる事は何でもするし、生涯セス様に喜んで愛を捧げ続ける。
「どうした? サラ。緊張しているのか?」
ずっと私が黙ったままだったからか、セス様が声を掛けてくださった。
「は、はい。……それもありますが、セス様と結婚できて、私は凄く幸せ者だなって、幸福に浸っているんです」
はにかみながらそう答えたら、セス様は目を丸くした後、少し顔が赤くなられた。
「……そうか。お前と結婚できた俺も、幸せ者だ」
耳元で小声で囁かれて、私は耳まで真っ赤になりつつも、身に余る程の幸せを噛み締めたのだった。
「サラ様、とてもお綺麗です!!」
ハンナさんとアガタさんに手伝ってもらって、私はウェディングドレスに身を包んだ。胸元にレースをあしらい、裾がふわりと広がった光沢のある白いドレスは、皆さんが似合うと絶賛してくださった一品で、まるで本当にお姫様になったかのような気分にさせてくれる。髪も綺麗に編み込みながら纏めてもらい、お化粧も済ませると、鏡に映った私はまるで別人みたいだ。
「お二人共、ありがとうございます!」
「これなら旦那様も惚れ直されますね」
「そ、そうでしょうか……」
私は照れながら答える。
いくら私が綺麗になったとは言え、セス様に惚れ直していただくだなんて、恐れ多くて想像もできないけれど……、もし、そうなったら良いな、とは思う。
「さあサラ様、もうすぐ式のお時間ですよ」
「えっ、も、もう?」
鏡に映る自分の姿が全然見慣れなくて、何となく落ち着かず、何処か変ではないかと確認していたら、ハンナさんに笑顔で促されてしまった。着替えやお化粧は確かに大変だったけれども、何時の間にかすっかり時間になってしまっていた事に気付いて、私は狼狽える。
私がセス様と結婚だなんて、半年と言う期間をかけて準備してきたとは言え、何だか夢を見ているみたいで、まだ実感が湧いていない。式場に移動したけれど、まるでふわふわと雲の上でも歩いているかのような心地だ。ヒールが高い事もあってか、足取りが覚束ない。
「サラ、とても綺麗だ」
入場して、セス様の所まで辿り着くと、私の手を取ってくださったセス様が、顔を綻ばせながら囁いてくださった。それまで緊張と不安しか感じていなかったのに、一気に嬉しさで胸がいっぱいになる。
「ありがとうございます。セス様も、とても素敵です」
白を基調にした花婿衣装のセス様は、すらりと高い身長としっかりと鍛えられたお身体がより映えて、とても凛々しくて格好良い。こんなに素敵な方が私の旦那様になるなんて、何だか未だに信じられない。そんな事を口にしたら、セス様に怒られてしまいそうだけれども。
セス様にエスコートされて祭壇の前まで進み、緊張しながらも誓いを交わし合って、私達は夫婦になった。
「旦那様、サラ様、おめでとうございます!!」
キンバリー辺境伯邸の皆さんを始めとして。
「セス! サラ! おめでとう!!」
「お二人共、末永くお幸せに!!」
国境警備軍の皆さん。
「お綺麗ですよ、サラ様!」
駆け付けてくださった王都のイアンさん達が、次々とお祝いの言葉を掛けてくださった。
「ありがとうございます、皆さん!!」
祝福してくださる皆さんにお礼を言いながら、隣に立つセス様をそっと見上げる。私の視線に気付いたセス様が目を合わせて微笑んでくださって、顔に熱が集まったけれども、やっぱり幸せで、つい笑みが零れた。
私がこんなに幸せになれるなんて、一年前は思ってもいなかった。フォスター伯爵家でこき使われて、虐げられて、こんな毎日がずっと続くだけなのだとすっかり人生を諦めていたけれど、セス様に出会えた事で、私の人生は劇的に変わった。好条件でお屋敷で働かせていただいて、お母さんから教わったおまじないが魔法だと分かって、国境警備軍でそれを存分に活かせる環境を整えていただいて。気付けば私がフォスター伯爵となって、今ではキンバリー辺境伯夫人だ。とてもじゃないが、変化が目まぐるしくて全然付いて行けていないのだけれども、それもこれも全部、セス様のお蔭だ。
少しでも恩返しがしたくて、ずっとキンバリー辺境伯領で、セス様のお傍でお仕えできたらと思っていたけれども、まさかそれがセス様の妻という形で実現するだなんて、思ってもいなかった。幸せ過ぎて怖いくらいだ。こんなに恵まれていて良いのだろうかと思ってしまう。
セス様にこんなにも幸せにしていただいたのだから、セス様の妻になった以上、これからは辺境伯夫人として、もっと色々な事でセス様を支えられるようになっていきたい。今はおまじないで多少はお役に立てているとは思うけれども、それに甘んじずに、領地の事も、軍の事も、そして今はセス様に任せっぱなしになってしまっている、フォスター伯爵領の事も、もっと勉強して、セス様の力になれるようになって……。何時かは、自信を持ち、胸を張って、セス様の隣に立てるような……そんな人になりたい。
我ながら身の程知らずで大き過ぎる夢だと思うけれども、それでも一歩ずつ、なりたい自分を目指して生きたい。将来の夢なんて持つ気になどなれなかった私が、今は未来に希望を持てている。そのきっかけをくださったセス様には、感謝してもし足りない。セス様が少しでも幸せになれるのならば、私にできる事は何でもするし、生涯セス様に喜んで愛を捧げ続ける。
「どうした? サラ。緊張しているのか?」
ずっと私が黙ったままだったからか、セス様が声を掛けてくださった。
「は、はい。……それもありますが、セス様と結婚できて、私は凄く幸せ者だなって、幸福に浸っているんです」
はにかみながらそう答えたら、セス様は目を丸くした後、少し顔が赤くなられた。
「……そうか。お前と結婚できた俺も、幸せ者だ」
耳元で小声で囁かれて、私は耳まで真っ赤になりつつも、身に余る程の幸せを噛み締めたのだった。