高嶺の花も恋をする【番外編追加】
莉緒!どうしたの?

あんたは佐伯のことが好きなんでしょ!

目の前のドアを開けて2人の元に割って入りたくなる感情が爆発しそうになった時、伊藤さんが「ごめん」と謝った。

「急に告白して、色々と気持ちぶつけてごめん。少しの間でいいから考えて貰えないかな?」

「...はい、分かりました」

莉緒が頷いて返事をすると、伊藤さんは「ありがとう。またね」と言って莉緒の前からこっちに歩いて来たので、焦ってその場から給湯室へ駆け込んだ。

伊藤さんが出て行って莉緒が会議室から出て来たところをすぐに捕まえた。

「どういうこと?」

突然の私の登場と言葉に身体をびくつかせて、目を見開いてこっちを見た。

「ごめん、嫌な予感して覗きながら全部聞いてた」

「.....そっか」

「ねえ、まさかあの人と付き合うなんてことないよね?」

「...うん」

莉緒の濁すような返事に亜香里の片眉が上がる。

「何?それ。どうしたの?いつもなら考える間もなくその場で断っていたじゃない」

「うん....。何となく断れなかった」

「莉緒....」

信じられない思いで莉緒を凝視すると、自信無さげに視線を落としてつぶやくように言葉にする。

「ずっと好きだったって言ってた。私....佐伯くんのこと好きだって思ってからそんなに経っていないのに、片思いで苦しいって気持ちを知って。私、そういう相手の気持ちを考えないで今まで酷いことしてきたんだって思ったの。ずっと好きでいるって、ずっと苦しいって気持ちも」

「いや、莉緒の場合それ考えていたらキリないと思うけど。むしろ変に期待しちゃうし」

「でも...」

「伊藤さんの秘めていた気持ちは、あんたの奇跡の初恋を越えるの?莉緒は佐伯の事が好きなんでしょ?」

「....でも、佐伯くんに私迷惑だって言われたし。もう話しかけてもほとんどしゃべってもらえないし。そもそも私、振られたんだよ.....。好きとかそんなの....」

その日の莉緒はそれ以上煮え切らない返事を変えることは無くて、亜香里の心配は解消されなかった。
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