高嶺の花も恋をする【番外編追加】
「元カノさんは侑くんのどんなとこが好きだったんですか?」

「え.....優しくて、何でも言う事聞いてくれるとこ」

「そうですよね。侑くん凄く優しくて、私もそういうところ大好きです」

元カノの言う事を気にした様子もなく自ら惚気る莉緒に、佐伯のことに関すると空気が読めないところは相変わらず凄いなと目の前の光景を眺めた。

「何で佐伯くんがあなたみたいな人と付き合えたの?信じられない!」

「え?」

「あ〜何でも言うこと聞くから、とりあえずそばに置いとく感じ?」

「は?」

パチパチと瞬きをして、小首を傾げ目の前の女を凝視してる。

あ...莉緒が反応した。

この女が佐伯の事を侮辱したのを察知したんだ。

そんな失礼な質問に一瞬眉をひそめた莉緒は、私の方に視線を向けてくる。

私が『やれ』と眼差しで言ったのを確認して、小さく頷いてからあいつに視線を戻してニコリと極上の笑みを見せた。

「私ね、一度佐伯くんに振られているんです」

「え?」

「私、ある日佐伯くんの事が好きだって自覚して。初恋だから舞い上がっちゃって。みんながいるって意識なく社食で大きな声で告白しちゃって、迷惑だって振られたんです。嫌われちゃったんだ....諦めなきゃだめかなって思ったけど苦しくて。佐伯くんのこと諦めるなんてできなくて.....。そしたら佐伯くんが声をかけてくれて、やっと付き合えることになったんです。もう私、毎日幸せで。だから.....私が佐伯くんに付き合ってもらったって言い方の方が正しいですね」

「うそ...。あなたが佐伯くんに振られるなんて」

莉緒の言葉にまた驚き信じられないと目を剥いている。

ふんって鼻で笑って見ていると、今まで黙っていた佐伯が急に声を荒げて言った。

「違うよ!ちゃんと言ったでしょ。本当に嬉しかったんだよ。あの時は酷いこと言っちゃって本当にごめんね。でも嬉しかった。莉緒の事、本当に好きだったし」

「うん、ちゃんと聞いたよ。でもね、私が侑くんにベタ惚れして告白したの。これは変わらない」

見つめ合う2人にホッとしてから「はい!はい!イチャイチャはそこまで」と割って入り、信じられないものでも見ているようなこの女に、「そう言うことだから前カノさん。ほら、莉緒の左手見てみな」と勝利を確認して言ってやった。

莉緒の薬指を見れば、華奢な指にダイヤモンドが輝いている。

「うそ!」

硬直したその耳元に顔を寄せて囁いてやる。
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