身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く

父は一瞬なにか言いたげな表情をしたが、気まずそうに言葉を呑み込んだ。どうしたんだろう? でも、間違ったことは言っていないし。そういえば、柊和コーポレーションからどうして招待されたんだろう。関係ないのに。
まあ、いいか。とりあえず、打開策が見えたのだから。

「まかせて、花純。うまくやるから。三橋さんと旅行にいっておいで」

どうにか父をそれで納得させ、私は柊和コーポレーションのパーティーに出席した。当日はベビーピンクの、自分では照れくさくて絶対に選ばない花純の持ち物のドレス着て、髪も緩く上品にセットしたスタイルに仕上げてもらった。三橋さんからの贈り物であるピアスは借りられないが、それに似た印象の揺れるピアスを用意した。花純の名刺も借りてきて、準備はばっちりである。

父は最初は影武者作戦に難色を示していたものの、普段かっちりしたスタイルばかりの私が花純に成りすますと「すごいな!」「似合うぞ!」と少々親バカを発揮してご機嫌になりつつある。

「は、初めまして……いやぁ、お会いしたかったです」
< 15 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop