身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く

社長は愛想がいい印象だが、横の息子は会釈をするばかりでうんともすんとも言わない。視線は私には向かずに父にばかり向いているが、おそらく父に対してもなんの興味も持っていないとわかる。彼の目は壇上でのときと同じように、はるか遠くを見ている気がした。

なんなのこの人。花純に興味がないの? 今回は花純を演じているため、そっぽを向かれると花純を否定されている気がして腹立たしくなった。いや、興味を持たれても花純の中身をなにも知らないくせにと同じく腹が立つんだけど。こんなに頑張って演じているのだから、赤くなってくれるその他の男性たちの反応の方がやった甲斐があったというものだ。渾身の花純スマイルをひとつ無駄にした。

 結局、柊社長、そして柊専務との会話はこの一瞬だけで、パーティーは終わった。

会ってみてもやはり、こちらがここまでするほど重要な関係性だったとは思えない。花純の旅行をキャンセルさせずに本当によかった。これなら別の役員が代理で参加したってよかったし、もっと言えば私が秘書として出席したってなんの問題もなかっただろう。

「はぁー、任務完了! お父さん、お疲れさま」
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