身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く
第三話 最初で最後の夜
ということがあったのだが、まさか彼がこの後、花純に求婚してくるとは思わなかった。
父を通じて貴仁さんと一度会いたいという返事をすると、予約が取れないと有名なフランス料理の名店での食事を提案された。当日となった今日、清楚なベビーピンクのワンピースを着て髪はふわりと持ち上がるくらいに柔らかくセットして約束の店へ向かう。
これから婚約しようというのにまだ引っ掛かっている。
パーティーで彼と挨拶をしたときは冷たくすら感じ、まったく好意に気づかなかった。いったいどこで花純を見初めていたのだろう。好きなわりにあんなに冷たい視線を向けるなんてそれもそれで腹が立ってくる。
とにかく、花純を狙う男に気づけなかったのは私の大きなミスだ。これまでさんざん、花純に近づく男を排除してきた。
もちろん相手が真剣な想いなら私だって邪魔をする気はないのだが、花純を狙って私と仲良くなろうとする男性だとか、花純と間違って私を口説き始める男性だとか、きちんと彼女を幸せにしてくれるとは言い難い男性ばかりだった。
最終的に本当は私のことが好きだったんだとか調子のいいことを言い出すような人もいて、結局は外見が同じなら私で手を打とうなどという軽い気持ちの持ち主なのだ。
しかし、それなら今回もうまくいけば、私で手を打ってもらえるのかもしれない。顔だけではなく花純のような可憐な性格を装えば、妹の私でもいいと言ってくれるのではないだろうか。うまくやって、花純と三橋さんの邪魔をされないようにがんばらなければ。