身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く

幼少期、ふたりで公園で遊んでいたところを花純だけが誘拐されるという事件があった。警察のおかげで大事には至らなかったものの、花純は特別男性に狙われやすいのだという危機感と、彼女を守らなければという使命感が私の中に芽生えた。その経験は今も私のトラウマとなっていて、花純が可憐に成長すればするほど、近づく者を警戒する護衛のような振る舞いに拍車がかかっている。

美人姉妹などとセットにされても私は男性にはたいしてモテないから心配することはないのだが、花純は違う。高嶺の花でありながら誰にでも分け隔てなく優しく接し、笑顔に溢れ、そばにいると心が癒される。比べられてきたはずの私でさえそう思うのだから、年頃の男性は常に、花純を狙っていると言ってよい。

「香波ちゃんの今日のピアス、かわいいね。綺麗」

花純は白い手を伸ばし、私の耳たぶを軽く触った。ほんの小さなものだが、ブリリアントカットのダイヤモンドが付いている。光り方を味わうように、彼女はピアスを眩しく見つめている。これをされたら男性はたまらないだろうなと我が姉ながらしみじみと感じた。

「ありがとう。この間買ったんだ」
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