身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く
花純の耳には、恋人にもらったと言っていた花の形に埋め込まれた真珠のピアスが揺れている。
三か月前に贈ってもらったと言っていたとき、素敵だと何度も褒めた。恋人の愛が詰まっていると思うと、花純の魅力が何倍にもなったように感じた。
私たちは製紙業を営む『シーナ製紙株式会社』の社長令嬢で、彼女の恋人は副社長の三橋光汰さんという方である。私も付き合いが長い信用できる人で、花純に彼という恋人ができて心底安心した。優しくて誠実で、しっかりしている三橋さんは花純とお似合いだ。今はもう私ではなく、花純は彼に守ってもらえるだろう。
「花純! 花純、ちょっといいか」
和やかなティータイムに割って入ってきたのは、父と母だった。父は姉に似ておっとりしているがシーナ製紙の社長の貫禄がある。母は私に似ていて、取り乱す父に「あなた静かになさって」とピシャリと窘めた。
「お父さん、どうしたの?」