身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く
『ありがとう……私、ずっと、ずっと光汰さんが大好きで、そうなったらいいなって、思ってたからっ……うれしくて』
私は「うん、うん」と相づちを打って聞いていた。
『幸せで、死んじゃいそう……』
これでわかっただろうか。花純はもう、貴仁さんの割り込む隙はないほど満たされている。本人と会えば奪い取れる自信があったのかもしれないが、言葉通り幸せで死んでしまいそうな彼女の声を聞き、貴仁さんは黙ってしまった。ショックだったかもしれないけど、こうでもしなければ諦めてもらえそうになかったから。
「よかった。花純、帰ってからいろいろ話聞かせてね」
『うん!』
通話を終え、静寂に戻る。ソファに力なく座ったままぼんやりとテーブルを見つめる貴仁さんは、いつかの遠い目をしていた。
「貴仁さん。すべて私のせいです。申し訳ありません」
「……一族で俺を謀るとは、シーナ製紙はいい度胸をしているな」
彼がぽつりと吐いた言葉にハッとする。
「シーナ製紙は関係ありません! 父も姉も、最初にきちんとお断りをすると言っていたんです。今日も本当は、私が妹として、花純の件は諦めていただくようお願いするつもりでした」
「抱かれておいてどの口が言っている」