身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く

その後、驚くほど話はトントン拍子に進み、料亭で両家親族が顔を合わせをした。少しでも貴仁さんの好みに近付けたくて、着慣れない白のフレアワンピースを選んだ。
あの夜からきちんと貴仁さんと再会したのはこのときが初めてで、彼は相変わらずなにを考えいるのかわからない澄ました顔をしていた。

「御社で独自開発している素材を優先的に柊和コーポレーションで扱えるなら、大きなメリットとなります。わが社に取り込んで開発をストップさせるのは惜しいと感じました」

食事が終わり両家ともリラックスした席で、私の向かいに座る貴仁さんは資金提供に切り替えた理由について説明した。

「感謝しております。もちろん、開発した末には御社の発展に寄与することを約束しますよ」

父は上機嫌だ。しかし資金提供にした方がメリットが大きいというのなら、最初から向こうは買収の話などしなかったのではないだろうか。貴仁さんの手の上で転がされている感じは否めない。
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