身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く

着替えなどもあるため寝室がいいと思い、ベッドの横にそっと荷物を置いた。慌てて買い揃えた花純っぽい華やかなワンピースと仕事着だけは、クローゼットの中へ掛けさせて貰う。

寝室から恐る恐るリビングへ戻ると、彼は今度はソファで寛ぎ、ノートパソコンを開いて仕事をしていた。

私が見えていないかのような扱いにさすがにショックを受け、思いきって少し離れたソファに座ってみる。彼は足を組み、パソコンから手を離してこちらを見た。

「なんだ」

「どうして私と結婚する気になったんですか?」

「姉の代わりをすると言うならそうしてもらおうと思っただけだ。体の相性は悪くなかったしな」

いきなりしれっと体の相性に言及されて恥ずかしくなり、目が泳いだ。
やっぱり私は花純の代わりなんだ。最初に狙った通りのポジションに収まったということだけど。

花純との結婚はシーナ製紙存続の条件だったのに、今回は無条件で資金提供に切り替えた。彼がどんな手を使っても手に入れたかったのは花純だけで、私に対しては条件をつける必要もなかったのだろう。
ああ、ダメだ。こんなことで傷付いていたら身が持たない。いい加減慣れなければ。
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