身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く

電気を点けたつもりがダウンライトがひとつ点いただけで、私はそれでいいやと思い薄暗い中ソファに座った。
疲れた。連日、いろいろありすぎて、気持ちが揺れ続けていた。
ひとりの時間に力が抜け、私の体はソファに沈んでいく。

──それからどれくらい経ったのか。私の意識はどこかへ飛んでいたようで、目が覚めてもなおすぐには体は動かない。
眠ってしまっていたのだとわかり、手首を顔の上に持ってきて腕時計を確認すると、まだ十分ほどしか経っていなかった。肘をついてどうにか体を起こし、ソファに座り直す。

「……えっ?」

なぜか、私の頭があった方に貴仁さんが座っていた。起き上がると距離ができたが、寝ていたときはすぐそばに腰掛けていたとわかる。

「帰ってたんですか?」

「……ああ」

ビックリした。部屋はダウンライトが灯っているだけで暗く、彼はとくになにをするわけでもなく、そこに座っていた様子だ。
なぜ電気を点けなかったのだろう。私が眠っていたから……なわけないよね。
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