身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く
俺のような男を抱きとめる度胸のある彼女の性格とは少しアンバランスな、妖精のような服装が目に焼き付いていた。それを頼りにパーティーの写真から椎名花純を割り出した。
俺は一匹狼などと噂の的にされ、反論を歓迎しても誰ひとり歯向かう存在のいない今の立場で、椎名花純にだけ唯一の弱点を握られたことは気がかりだった。数日後には噂になってもよいものを、彼女は本当に誰にも言わずに俺との約束を守っている。
ひと言、感謝を伝えたいと思って探していただけだったが、あの思い出はあまりに甘く、日に日に俺を欲望に掻き立てる。彼女の凛とした笑顔は俺の中で輝きを増していった。
どんなに頼もしい性格でも、あの美しい容姿では周囲の男たちに狙われているはずだ。そう思うと焦る気持ちに襲われるが、彼女も心を許した男になら甘えたり守られたりするのかもしれない。できることならその相手となりたかったが、最初に情けない姿を見せてしまった俺に二度とチャンスは来ないだろう。
停止したエレベーターの中でさえなければ。別の場所で出会えたらどんなによかったかと運命を呪った。