身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く
「花純さん」
俺はけりをつけたかったのかもしれない。婚約者を横に連れて現れ、思うことは色々とある。だが、あのときのことを感謝している。花純を名指しして話しかけた俺に三橋は眉根を寄せたが、これだけは伝えたかった。
「創立記念パーティーの日、助けてくださりありがとうございました」
これで終わりだ。あの日のことは忘れよう。これまで、俺と彼女の秘密のように思い返してしまったから忘れられなかったのだ。婚約者のいる場で共有してしまえば、大切な思い出ではなくなる。
すると、花純は目を泳がせながら「えっと……」と困惑した声を漏らす。
彼女は助けを求めるように三橋を見つめ始め、それを受けて「今日はその件を謝罪しに来ました」と三橋は言った。
「謝罪?」
「花純から創立記念パーティーについての話を聞きました。本日は、この件を黙っているわけにはいかないと思い、私の独断で謝罪にお伺いしたのです。あの日、花純は所用でパーティーに出席しておりません」
「……は?」
「申し訳ありません。あの日、花純を装ってパーティーに出席していたのは、香波さんです」