身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く
三橋の話に理解が追い付かない。いや、理解はした。パーティーに出席していたのは花純ではなく香波だったということだ。なぜそんなことになったのか意味がわからないが、するとそこに座っている花純は、俺とほとんど面識がない女性だということになる。俺が花純を認識したのはあのパーティーでの出来事があってからだ。
で、それが花純ではなく、香波だったということは、あのエレベーターでの出来事は……。
「社長も香波さんも、ご招待を断るわけにはいかないという責任感から、騙す形を取ってしまいました。大変申し訳ございません」
「……いや、もう結構です」
今しがた忘れようとしたあの出来事が、鮮明に浮かんでくる。彼女は俺を抱きしめて微笑み、大丈夫だと囁いた。あれは香波だったのか。
すると今までの引っ掛かりがみるみるうちに解けていく。俺は香波が見せる本来の姿にどうしようもなく惹かれていた。心変わりした自分が嫌になったが、最初から、俺が好きになったのは香波だった。