身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く
「……大丈夫です。貴仁さんだけで食べてきてください」
「香波。話をしたいんだ」
「私と話しても楽しくないと思います」
淡々と言い放つはずだったのに、声は細く掠れた。義理でかけられた言葉を無下にする態度を怒られるかと思ったが、貴仁さんは口をつぐみ、項垂れている。
「すまない……怒らないでくれ。今朝は香波の食事が口に合わないと言ってしまったが、それは……」
「機嫌をとってくれなくていいです。口をついて出た言葉が本心だと思いますから」
「違う。あれは本心じゃなかった」
どうして朝と違うことを言うのだろう。私を舞い上がらせて、そしてまた突き放すの? 貴仁さんと暮らしてから、彼がなにを考えているのかわからなくて心が休まるときがない。
ここままではまた混乱する気がし、どうにか「今日は放っておいてください」とつぶやいて立ち上がった。柔らかいソファからいきなり地面に足をつける。はやく彼の前を通りすぎようとしたが、視界がぐらりと揺れた。
「きゃっ……」
「香波っ」
疲れが溜まっていたのか足がよろけ、スーツスカートのまま貴仁さんの方へ倒れる。とっさに出してくれた彼の手に抱き留められ、すっぽりと収まった。
「香波。話をしたいんだ」
「私と話しても楽しくないと思います」
淡々と言い放つはずだったのに、声は細く掠れた。義理でかけられた言葉を無下にする態度を怒られるかと思ったが、貴仁さんは口をつぐみ、項垂れている。
「すまない……怒らないでくれ。今朝は香波の食事が口に合わないと言ってしまったが、それは……」
「機嫌をとってくれなくていいです。口をついて出た言葉が本心だと思いますから」
「違う。あれは本心じゃなかった」
どうして朝と違うことを言うのだろう。私を舞い上がらせて、そしてまた突き放すの? 貴仁さんと暮らしてから、彼がなにを考えているのかわからなくて心が休まるときがない。
ここままではまた混乱する気がし、どうにか「今日は放っておいてください」とつぶやいて立ち上がった。柔らかいソファからいきなり地面に足をつける。はやく彼の前を通りすぎようとしたが、視界がぐらりと揺れた。
「きゃっ……」
「香波っ」
疲れが溜まっていたのか足がよろけ、スーツスカートのまま貴仁さんの方へ倒れる。とっさに出してくれた彼の手に抱き留められ、すっぽりと収まった。