身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く
第七話 守ってくれる人
それから、どうなったんだっけ……。私はベッドの中でまどろみながら、昨夜のことをぼんやりと思い出していた。
食事に出掛けた車内では最初のツンとした態度とは打って変わり、彼は何度も私に話しかけた。「趣味はあるのか?」なんて今さら聞かれ、なにも思いつかない私が「料理です」と答えると、彼は消えそうな声で「食べたい」とつぶやいた。そういえば夕食を作るという話は結局どうしようかと考えたが、口に合わないと言われたことをまだ根に持っている私は、すんなりと作りますとは言わなかった。
食事中も初デートのときと同じく緊張した様子で、伝染した私も挙動不審になった。恋人期間はゼロだったのに、まさしく今がそんな感じというか。思い出すと顔がニヤつくくらいには私もうれしいのだけど、いざ彼と対峙するとどうしていいかわからず逃げてしまうのだ。
それに、これまでの期間の寂しさをなかったことにはされたくないし。
と言いつつ、彼に朝食をつくってあげたいなと思い、そろそろ起きようと目を開く。
「ひゃっ」
声を上げたのは、眠りから覚めてすぐに視界は貴仁さんでいっぱいたったからだ。
仰向けで寝ていたのに、天井を遮って彼は私を見つめていた。