身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く
でもなんだかおかしいな。寝相が悪い方ではないと思うし、留まっていたボタンが勝手にみっつも外れるだろうか。疑念が湧いてきてじろりと貴仁さんを睨むと、彼は涼しい顔で目を逸らす。
「貴仁さん……もしかして」
「俺より早く起きればいい」
しれっとそうつぶやかれ、反論する気もなくなり問い詰めを終えた。
今日は休日だが、貴仁さんは基本的に休日でも家で仕事をする。私は邪魔にならないよう花純と出掛ける予定を入れているが、朝からじっくりと、彼とこうして他愛もない時間を過ごすのは初めてだ。
ビジネススタイルの貴仁さんは近寄りがたいくらいに洗練された雰囲気だが、こうしてリラックスしている姿の彼も素敵だと思う。改めて、とくになにも秀でていない私と結婚しているのが不思議なのだが。それこそ、社交界で有名な花純のような女性がお似合いだ。
「……貴仁さんって、私のどこが好きなんですか?」
こちらから妙な話題を切り出したからか、貴仁さんは「え」と声を漏らして期待の目を向けてくる。