身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く
やっと気づいたかと思いこちらも睨み返す。すると男性は、大通りに出る前の細い路地へと方向転換して走り出したのだ。
「あ! 逃げた!」
『香波? どうした?』
「すみません貴仁さん! ストーカーを追いかけるのでまたかけ直します!」
『は!? ストーカー!?』
貴仁さんの声は耳にキンと響いたが、私は路地へ消えた男性を追いかけながら、早口で答える。
「花純のことをずっとつけてた人がいるんですけど、逃げられてしまって」
『おい、待て』
「捕まえて、もう花純を狙うのはやめてってガツンと言ってやります!」
『待てと言っているだろ! つけられているのはお前じゃないのか?』
「え? すみません、走っててよく聞こえません! あとでかけ直しますね!」
まだ電話口から貴仁さんの声が聞こえているが、走りづらいため通話を切った。