reborn
『フェミニン×シックで大人っぽく # 倉下初 # 鮫上紺
15276いいね』
『トラッドファッション合わせ #星出嵐 # 宇貝虹叶
12870いいね』
「ふーん」
勝ってる勝ってる。こりゃまた1位かなー、と思いながら画面をスクショする。まあね? 一応ね? 自分たちの総いいね数を把握するのとかで使うかもしれないしね? なんて、もうただの自分への言い訳にもならないくらいには頬が緩みきってるんだけど。もう言い訳するのも馬鹿らしいので潔く念の為の2枚目をスクショ。仕方ないでしょ見入ってて写真撮り損ねたんだから。それに気付いたのは、家に着いて服を着替えた後で。あれは一生の不覚だね。SNSは初が更新したから、もちろん写真も初のスマホだ。
スクロールするも自分たちよりいいね数が多い投稿は無……
『ショッピングを楽しむ姿 # 倉下初 # 戸亀羽生 # 星出……続きを読む
20124いいね』
「わお」
20124いいね。ダントツで1位だと確信するほどの数字の横にはパートナーの名前があった。
「えっ!? な、なんですか!?」
隣でそわそわしている初が飛び上がりそうな勢いで声を上げた。
「やー、負けちゃったなーって。いいねの数」
「ざ、残念ですね……。あ、ちなみに誰が一位なんですか?」
「初」
「えっわっ私ですか!? ん? でも負けたって……」
「初に負けたってわけ」
スマホの画面を初の方に向けると今度は文字通り飛び上がった。おもしろ。
「こ、ここここれいつのまに……!?」
撮られたことに気付いてなかったのだろうか。割と普通に見かけたけど。それに気付かないくらい夢中になっていたのかと思うと少し……いや、同性の友達といるだけでこういう感情を抱くのは流石に心が狭すぎるからやめとこ。今のナシナシ。
「でもこれは、紺くんのことを考えながら選んでる時なので、実質紺くんと二人でトップですよ!」
「……じゃあ追加ポイントは俺たちのものってことで」
……とか思ったら、そんなことを言われてちゃうし。なんの気も無しに言われたはずの言葉がいちいち嬉しいから困る。主に照れ隠しの言葉とは裏腹ににやけきってる口とかが。
「あ、二人ではないですね。羽生ちゃん達も写ってるので。ポイントは等分じゃないですか?」
「等分なんかしたら2位3位よりポイント減るじゃん。俺は断固各ペアに1位分のポイント追加を要求するね」
「でも私たち2位ですし3枠中2枠も埋めちゃうのはアリなんでしょうか……」
「俺がドキドキしたからいーでしょ。そういう趣旨の課題なんだから」
やべ。けろっと恐ろしいこと言われて言わなくていいことまで言った。最悪。どうしたらポイント等分なんて思考になっちゃうわけ。うーん、初だからか……。めちゃくちゃ納得がいった。
「な、なんでですか!?」
「そもそも初が何着てもドキドキしてんだから俺が優勝でいいじゃんもう」
半分自棄で言った言葉に恥ずかしくなり、すでに若干後悔し始めてる。初とだと感情のセーブとか、そういうのが一切通じない。
「へ!? ぼ、暴論では!?」
「えー? 『ドキドキさせる』なんてざっくりな課題出したの学園長だし、それで俺がとやかく言われてもねー」
「そ、それは……そうですが……じゃ、じゃあ! 私も毎秒紺くんにドキドキしてるので優勝です!」
……俺のセリフを応用してくるのはズルいでしょ。流石に完敗を認めざるを得ないじゃん……と顔を覆った。
「んーじゃあ俺たち2人で最強ってわけで」
指の間から初を見て言うと、勢いよく抱きつかれた。10、9、……平静を保つ為と警報が鳴る前に離れる為に心の中でカウントダウンを始める。俺が剥がす前に我に返った初が放すまであと3秒。
ちなみにポイントは各ペアに一位分が付与された。やったね。