グリフォンの恋人・序章・エピソード0

ミルラの肖像画

<ミルラの肖像画>
オーギュストは、窓辺の近くの椅子に座り、聖典を手に持った。

モデル殿のご機嫌は・・・
悪くなっていないので、
取りあえずホッとしている。

「とにかく、父は、突然、理由なく家出をしてしまうのです。
困ったものですが」

ミルラは、指で四角をつくりながら、フレームの中の構図を決めている。

「少し、微笑んでいる感じ?にする?
それとも伏し目がちに、愁いを
おびた感じがいいかしら?」

ミルラは、小声でブツブツ言っていたが

「神官様、窓辺で本を開いて・・
顔は、少しこちらにむけてくださいますか?」

ミルラは木炭を動かしながら、
指示を出していく。

少しして、ミルラは自分で納得するように、うなずきながら

「愁いをおびた感じが、いいと思います。
神官様が、こんなにお若い方だったとはびっくりしました」

ミルラはそう言いながら、
手早く木炭を動かしていた。

「今日は何通りかのポーズを、
描かせてくださいまし。
あとで、気に入ったものを
選んでいただきたいので・・・」

ミルラは少し思案気に、あごに指先をやった。

うーーーーん

オーギュストの表情が、固いのだ。

ミルラはこれまでの経験から、
モデルの緊張を、どうゆるめるのかわかっていた。

「それでは神官様、
食べ物でお好きな物は、何がありますか?」

ミルラは戸惑っているオーギュストに、にっこりと笑って見た。
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