グリフォンの恋人・序章・エピソード0
「他に、何かお好きなものはありますか?」
ミルラの質問に、

オーギュストは少しためらったが、告白するように

「チョコレートが・・好きです。
疲れた時に、甘いものがほしくなって」

その答えに、ミルラは笑顔を見せた。
「チョコレートがお好きなんて、
私も目がないんです。
今度は、チョコレートケーキ焼きますね」

チョコレートは甘く、ほろ苦く、
満足感をもたらし、
そしてまた、
味わいたいと欲望がつきあがる。
その甘さに取りつかれてしまう。

オーギュストは、熱心にデッサン用の紙を見て、
修正する場所を、見つけようとしているミルラの姿を見て思った。

私はすでにこの感情に、取りつかれてしまったのだろう・・・・

夕方、ランタンの明かりが灯る時間だった。

オーギュストは貴腐ワインのせいもあり、少し赤くなりながら

「来週も、こちらに来ていいですか?」
その声は、
消え入りそうな感じではあったが・・・

信者たちを前にした説教は、
威厳と迫力があるのに、
ミルラの前では、恋の不安に悩む青年のようだ。

「もちろん!
お昼の前に、市場に行きませんか?
農家の朝市もあるし、楽しいのですよ」

ミルラは、屈託なく明るく答えた。
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