グリフォンの恋人・序章・エピソード0
「まったく、待たされるこちらの立場も理解できないほどの、
痴れ者(しれもの)なのか!
芸術家は、自由人であるのは、
よく聞く話だが・・・」

オーギュスト・サンサザールは、
神経のたった、いらつく様子で、
コツコツと靴音を立てて、
数枚の紙を持って、広間の中を歩き回った。

彼の頭は、明日の就任会見の
スピーチ原稿のことで
いっぱいだったのだ。

最年少で、最高神官の就任、
自分の立場を、
年上の狡猾な神官たちに、
認めさせなければならない。

チーン チーン 

美しい装飾の金の置時計が、
約束の時間が、すでに30分経ったことを知らせた。

「もう、時間がない!
今日はもう無理だ。
この画家は断ってください。
遅刻するようでは困る!
すぐに別の画家を手配するように」

「わかりました。そのようにいたします」
事務官は額に汗をかきながら、
頭をさげた。

「私は着替えて、執務室に戻ります」
オーギュストは広間の扉をあけて、いらだたし気に廊下を足早に歩いた。

昼過ぎに来客がある。
その前に・・・・

彼は、スケジュールを頭の中で
組みなおしていた。
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