グリフォンの恋人・序章・エピソード0

女神の降臨

階段脇の曲がり角に、さしかかった時。

ボスッ・・・

それは、春の突風がいきなり吹き付けてきたような、
はちみつ色の何かが、重さを持って、ぶっとんできた。

その瞬間、
オーギュストの持っていた紙が
四方にまき散らされた。

「なっ・・・」
オーギュストの体に、胸に、
誰かが、体当たりでぶつかってきたのだ。

「あああ、ごめんなさい、
ごめんなさい・・急いでいて」

ミルラが、オーギュストの腕に抱かれるように、倒れ込んでいた。

「君は・・・」
頭を打ちつけた痛みより、
驚きの感情が勝っていたのだ。

オーギュストの瞳に映る女性は、
それは・・・
自分の腕の中に舞い降りた
女神のように思えた。

甘い芳香と、柔らかな感触と・・
そして美しい。

とんでもなく大きな花束が、
いきなり天空に出現して、
こちらに放り投げ渡されたように。

それは・・奇跡?
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