グリフォンの恋人・序章・エピソード0
柔らかなはちみつ色の、ゆるい巻き毛と、同じ色合いの大きく見開いた瞳。

その瞳で、オーギュストを見つめている。
頬とくちびるは薔薇色で、
白い首筋は少し赤く染まって、
豊かな胸は息をはずませていた。

薔薇色の唇が開いた。

「ほんっとに、ごめんなさい!
お怪我は?」

ミルラはなんとか体を起こして、
オーギュストをもう一度見た。

「ああ・・」
オーギュストは感嘆の言葉を、
ため息をともにもらした。

「私は、画家のミルラと申します。
もし、お怪我や、着物が汚れてしまったなら、弁償いたしますので。
その、でも、今は急ぎで!!」

ミルラは、そう言いながら、
すぐに散らばったデッサン用の
紙を拾い集めた、

「私っ、最高神官様に、
お会いしなくてはならないのでっ!
もうっ!遅刻なんです!!」

オーギュストは、半身を床から起こして、現実に戻ったように、首を振った。

やっと、痛みを感じたのだ。

「君が画家なのか?」

手を首に当てて、オーギュストは床に座り込んで紙を束ねている
ミルラの背中に、声をかけた。
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