銀色ネコの憂鬱
「海老原 桜は、俺が通ってた美大に講師として来てたんだ。」
(講師…)
「最初は向こうからやたらと話しかけてきて…“サクラ”って名前に惹かれたんだと思うけど、すぐに親しくなって付き合った。」
(…先生と…)
「カメラマンでパソコン作業も詳しかったから、いろいろ教えてもらって、信頼もしてたし尊敬もしてたよ。あの頃は。俺の前ではあんな感じでもなかったしね。」
「“学生の頃にちょっと”…」
菫は以前に蓮司が言っていたことを口に出した。
「よく覚えてるね。」
「あ、えっと香澄ちゃんが…絶対女だって言ってて…」
焦って変な言い訳をしてしまう。蓮司も思わず小さく笑ってしまう。
「それで、卒業間近の頃に個展やってみないかって言われて…」
「あの個展。」
「そう。」
「まだ学生だったんだ…。」
「うん。たったの4〜5年前だけど…今よりまだ全然ガキだったから、あの頃は本気であの人のこと好きだった。」
「………」
「だから個展も頑張って、あの人のこと喜ばせようって思ってたんだけど…」
「………」
菫は黙って聞いている。
「あの人…結婚してたんだ。」
「え」
(講師…)
「最初は向こうからやたらと話しかけてきて…“サクラ”って名前に惹かれたんだと思うけど、すぐに親しくなって付き合った。」
(…先生と…)
「カメラマンでパソコン作業も詳しかったから、いろいろ教えてもらって、信頼もしてたし尊敬もしてたよ。あの頃は。俺の前ではあんな感じでもなかったしね。」
「“学生の頃にちょっと”…」
菫は以前に蓮司が言っていたことを口に出した。
「よく覚えてるね。」
「あ、えっと香澄ちゃんが…絶対女だって言ってて…」
焦って変な言い訳をしてしまう。蓮司も思わず小さく笑ってしまう。
「それで、卒業間近の頃に個展やってみないかって言われて…」
「あの個展。」
「そう。」
「まだ学生だったんだ…。」
「うん。たったの4〜5年前だけど…今よりまだ全然ガキだったから、あの頃は本気であの人のこと好きだった。」
「………」
「だから個展も頑張って、あの人のこと喜ばせようって思ってたんだけど…」
「………」
菫は黙って聞いている。
「あの人…結婚してたんだ。」
「え」