銀色ネコの憂鬱
蓮司は現地のメディアの顔出し取材も受けるようになっていた。
「スマイリー見て、蓮司がまた出てるよ。舞台衣装のコンセプトデザインにも挑戦、だって。」
———ニャァ
蓮司のアトリエで暮らすようになった菫は、長机でノートパソコンの画面をスマイリーに見せていた。
「写真だと少し痩せて見えるね。」
———ミャア
いつも返事をするように鳴くスマイリーに菫は笑顔になる。
「…静物画をメインに描いてきたが、最近は猫の絵を描くことも多い…って、猫がいない禁断症状出ちゃってない…?大丈夫かなぁ?」
———ニャア
菫はスマイリーをぎゅっと抱きしめた。
(私も蓮司の禁断症状出ちゃいそう…)


蓮司の帰国がいよいよ明日に迫った日の午後。
穏やかな日差しのなか、菫はいつものように長机でパソコンに向かっていた。
(明日…帰ってくるんだ…)
蓮司はニューヨークでも個展を成功させ、その様子は日本の美術雑誌や美術系のWEBサイトでも取り上げられた。

“ニューヨークの色彩が一澤 蓮司の世界をひろげた”
“絵画以外にも挑戦し、新たな可能性を感じさせる”

(すごいなぁ…ちゃんと結果残してる。ひさびさに会うの、ちょっと緊張しちゃうなぁ…)
菫はうとうとと眠気に襲われ、長机に伏して仮眠をとった。

菫は久しぶりに銀色の猫が出てくる夢を見た。
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