俺様社長は純情な田舎娘を溺愛する　〜その後のエピソード〜
スタッフと話していた品の良い貴婦人がこちらに気付き近付いて来る。

「あら、可愛らしい奥様だこと。
初めまして、川田の家内です。
何かお困り事があったら、私に何でも聞いて頂戴ね。」
　
上流社会特有な雰囲気を醸し出しながら、
川田夫人は果穂を品定めする。

「初めまして、果穂と申します。
よろしくお願い致します。」
果穂は緊張しながらも丁寧にお辞儀をして誰から見ても好印象だ。

上流社会にはこの川田夫人を筆頭に、夫人会の様な集まりがあると聞く。
　
今まで独身を貫いていた俺には無縁だと思っていたが……。

その様な面倒なしがらみに彼女を巻き込みたく無い。

「果穂さんはどちらの出の方かしら？
どちらのお嬢さん？」

俺に向けて言って来るあたり人が悪い。

「いえ、彼女は一般人です。
私が一目惚れして、やっと手に入れた女性なのでどうかお手柔らかに。」

「まぁ、堀井社長がそこまで惚れ込んだ子は初めてね。
果穂さん気を付けてね。
彼は何処にいても華があっておモテになるからきっと、心配事が絶えないわよ。」
　
ふふっと笑う夫人に、
俺の何を知ってるんだと心で悪態をつく。

「私は妻に一途なのでご心配無く。」
そう言って、早々立ち去ろうと果穂の肩に手を回し、退席を促す。
果穂は俺に微笑み返して、

「お忙しいところ、お邪魔しまして申し訳ありませんでした。また、会場でお話を伺えればと思います。」
と、果穂は頭を下げてこの場をやり過ごす。

さすが、俺の妻だ。と心で讃えその場を後にする。
< 170 / 232 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop