俺様社長は純情な田舎娘を溺愛する 〜その後のエピソード〜
「堀井社長、今晩は。」

不意に声をかけられて振り返ると、
以前から仲良くしているスイーツ店の経営者がにこやかな表情で、こちらに近付いてきた。

「果穂、以前限定ドーナッツを買ったスイーツ店の社長だ。」
と素早く告げ、こちらから握手を求めるように手を差し出す。

「お久しぶりです、松田社長。」
彼とは結婚前はお互い独身同士、
良く飲みに行ったりして親しくしていた。

「堀井君が結婚したと聞いていたから、
今夜はぜひ、奥様を紹介してもらおうと思って来たんだよ。」
彼は元々パティシエで小さなケーキ屋から始め、今では都内に数店構える経営者になった実力派だ。

歳も近く、親しみ易い人格者でもあって、
立ち上げ当初はお互いの理念や経営について、翌朝まで語りあった仲だった。

「妻の果穂です。
彼女は部類のスイーツ好きで、松田さんの店の大ファンでして、新作が出るたび良く店に並んで買って来るんですよ。」
そう言って果穂を紹介する。

「わざわざ並んでまで?
ありがとうございます。
松田圭吾と申します。
僕も普段は本社で店に立つパティシエですので、声をかけて頂ければいつでも確保させて頂きますよ。」

「ありがとうございます。
果穂と申します。
以前、限定ドーナッツの件で主人がお世話になりました。
実家への手土産にさせて頂き、大変美味しく頂きました。」
今日1番の笑顔を見せて果穂が言う。

「それは嬉しい限りです。
堀井社長とは立ち上げ当初から仲良くさせて頂いてるので、
気兼ねなく声をかけて頂ければと思います。
しかし、こんなに綺麗な女性を隠していたとは水臭いなぁ。」
気さくな感じの人で、果穂も肩の力を抜いて
ホッとしている様に見える。

「彼女は、しばらく遠距離だったんです。」

「へぇ、そうなんだ。
僕も地方出身で山の中の人里離れた小さな集落で育ったんです。
だから、こう言う場苦手で落ち着かない。」
果穂にそう話しかけ笑い合う。
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